『七姫物語 第三章 姫影交差』(高野和)感想

第9回電撃ゲーム大賞金賞受賞作の三作目。
前の二作とは趣を異にしており、読者の視野が広がった感がある。


とりあえずオビの煽り文句「少女の思いがあなたの心に重なる――心に触れる新感覚ストーリー」には異論がある。この「少女の思い」とは「みんなで仲良く楽しく」というものだが、それが一般大衆にも通じるとは到底思えない。この小説では、少女たちはタテマエとして平和を志向しつつ配下を通じて戦争するというカタチになっている。さらに言えば少女たちは幼く、ほぼ全ての少女は戦争を実質志向していないと思われる。
しかし振り返って現代の日本人はどうだろうか。まさに上の図式が当てはまらないだろうか。
平和を志向し戦争は嫌だと言いつつも心の奥底で戦乱を希(こいねが)い、「思いやり」と称して他国の軍隊に資金を提供し、他国の戦争をメディアを通して鑑賞し楽しむ。


前ニ作を通じて主要登場人物が「立っていた」のが、そのまま今作にも当てはまる。これは非常に嬉しい。さらに言えば、登場人物が色々な枷を嵌められていて、すなわち行動に制約があることが素晴らしいことだと思う。
だが、少々言い回しがファンタジーに過ぎるかと思われる。作者は詩が好きなのか?


個人的5段階評価ではA〜B。